高齢者財産管理の現場より~急速に増加中。「後見制度支援信託」

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2000年から開始された成年後見制度。既に17年以上が経過し、認知症の方の財産管理に関わる皆様に定着した感があります。
その成年後見人の現場において、最近急速に聞かれるようになった言葉が「後見制度支援信託」。
この制度による財産管理は、従来型の成年後見人による財産管理の方法とは根本的に異なる方法となります。
今回は、後見制度支援信託についてお話しします。

1.普段使わない預貯金は、信託銀行が預かる。それが後見制度支援信託。
今までの成年後見人による財産管理方法は、全ての資産を成年後見人が管理していました。
しかし、ごく一部ではありますが、横領など不当に資産を悪用する事例が問題となっていました。
この問題を解決するため、預貯金を「(生活費など)普段使う預貯金」「普段使わない預貯金」に分類し、普段使う預貯金を成年後見人が管理し、普段使わない預貯金は信託銀行が預かる制度を2012年より開始しました。これが後見制度支援信託です。

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2.信託銀行が預かる預貯金を引き出すときは、その都度「家庭裁判所の許可書」が必要。
後見制度支援信託の場合、生活費・医療費・介護施設費など、毎月支出される出費は成年後見人が管理する預貯金口座から支弁されます。
しかし、毎月の出費により成年後見人が管理する口座残高が少なくなったときや、突発的な入院費や家の修繕費など普段使わない出費が必要になった場合はどうするのでしょう?
この場合、個別に家庭裁判所に事情を説明のうえ「一時金交付許可書」の取得を申請し、この許可書を信託銀行に提示することで出金が可能となります。
家庭裁判所が個別に出金の理由を審査することで、成年後見人の不正問題を防ぐことができるのです。

3.従来型か、後見制度支援信託か、いくら信託銀行が管理するか、家庭裁判所が決定します。
成年後見人を決定する際、成年後見人が全ての財産を管理するのか(従来型)、それとも後見制度支援信託として信託銀行が一部の預貯金を預かるのか、具体的にいくら信託銀行が管理するのか、などは家庭裁判所が決定します。
また、既に従来型の成年後見人になっている方に対しても、従来型から後見制度支援信託へ変更すると家庭裁判所が決定する場合があり、注意が必要です。
一般的に、家庭裁判所は「預貯金が500万円以上」の方について、後見制度支援信託の適用を検討します。
後見制度支援信託を行う場合、法律専門職(弁護士・司法書士)が監査的立場として一時的に後見人に就任し、その監査の下、年間予定される生活費・医療費・介護施設費などを超える金額を信託銀行に預けることになります(なお、この専門職後見人は、信託銀行に預けた後、退任します)。

4.急速に増加中の後見制度支援信託。事前に収支計画や対応方法の想定が大切。
2012年に開始した後見制度支援信託。年々適用数が増加し、2016年末では成年後見人のうち約1割が後見制度支援信託の適用となっています(最高裁判所事務総局家庭局集計)。

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後見制度支援信託が適用されると、2で取り上げたとおり、成年後見人管理の口座残高が少なくなった場合や、入院費や修繕費など例外的な出費が必要な場合など、信託銀行が管理する口座からの出金が必要になる際、個別に家庭裁判所から許可書が取得が必要になり、手続きに煩雑かつ時間を要することが少なくありません。
認知症の方のライフプランを検討される場合、後見制度支援信託により出金に制限がかかることも考え、事前に収支計画や対応方法を想定することが大切となります。