相続させる旨の遺言により承継された財産について

「相続させる」旨の遺言とは、「長男には土地Aを、二男には土地Bを相続させる。」というように、共同相続人のうちの特定の相続人に対し、特定の遺産(相続財産)を「相続させる」と遺言することをいいます。
相続法改正により、このような遺言を「特定財産承継遺言」とよぶことになりました(民法1014条2項)。

「相続させる」と記載された遺言としては、「長男と次男に遺産を2分の1ずつ相続させる」など包括的な記載の遺言もありますが、いわゆる「相続させる」旨の遺言としては、「特定の遺産を特定の相続人に相続させる内容の遺言」を想定していますので、注意が必要です。

「相続させる」旨の遺言の通説・判例として「遺産分割効果説」という考え方があります。この考えは、相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)は、遺言で遺贈であるといえるような事情の無い限り、原則として遺産分割方法の指定であるとします。
ただし、相続人間でこの遺言と異なる遺産分割をすることはできず、遺言の効力発生時(遺言者が死亡した時)に、対象となる遺産が特定の相続人に承継されるという効果が発生するとした見解です。

そして、従前は承継を受けた相続財産が不動産であった場合、承継を受けた特定の相続人は、遺言によって取得した不動産を、登記なくして第三者に対抗できるとしていました(最二小判平成14年6月10日)。
しかし、相続法の改正(2019年7月1日から施行)により、遺言の有無及び内容を知り得ない相続債権者・債務者等の利益や第三者の取引の安全を確保のため、
法定相続分を超える部分を承継した場合、その法定相続分を超える部分については、登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないものとされました(改正後民法899条の2)。
なお、法定相続分の範囲内の部分については、従前どおり対抗要件なくして第三者に対抗できます。
※改正後民法899条の2の規定は、2019年7月1日以降に開始した相続について適用されます。